大型ショッピングモールの進出による地元商店街のシャッター街化という現象は、日本だけでなく海外でも同様に起きている。そんな中、欧米では、地方の小さな店舗が集結してECを活用する事で、大型店舗に対抗する動きが出て来た。今回は、ニッチながらも業績を伸ばしている新たなローカル特化型ECの事例を紹介しよう。
ロンドンのホームデリバリーサービス、HUBBUB
HUBBUBは、複数の小さな店舗の商品を顧客宅に配達するデリバリーサービスだ。「地元の商店から新鮮な食材を配達する」というコンセプトのもと、2010年に開始された。ロンドンの4地区がサービスエリアとなっており、顧客は自分が暮らす地区の商店の品物だけ購入できる。現在は、32店舗、約4,000品(魚介類や肉、野菜、チーズ、パン、ワインなど、食材)が取り扱われている。
HUBBUBの特徴は、受注や配送を各店舗に任せるのではなく、HUBBUBが全て担う点だ。HUBBUB側のコスト負担が大きいため、手数料は売上の50%となっている。安い手数料ではないが、各商店の売上は順調に伸びているため、店舗側の満足度は高い。顧客側にとっても、1軒1軒、自分でまわって購入する時間と労力を省けるため、双方に取ってメリットが大きい。今後は、サービス地域の拡大も計画しているそうだ。
NY、カリフォルニアの拠点配送サービス、Farmigo
Farmigoは、20名ほどの共同購入者がコミュニティを作れば、48時間以内に地元で収穫した食材を配送してくれるサービスだ。現在は、ニューヨークとカリフォルニアで3,500以上のコミュニティが登録している。
Farmigoでは、とりわけコミュニティごとに専用ページを開設できる点がユニークだ。サイトデザインは自由に設定でき、ローンチ記念にイベントを企画する事も可能だ。専用ページでは、地元の商店や農家の品のみが取り扱われる。また、コミュニティの地域住民であれば、新たに参加が可能だ。一種のソーシャルコマースの場となっているのである。配送は、農家が行うため、Farmigoへ支払う手数料は販売額の10%のみで済む。
サンフランシスコのホーム&拠点配送サービス、Good Eggs
Good Eggsは、地元の商店、農家の商品を、自宅や拠点に配送するサービスだ。果物、野菜、鮮魚、惣菜、パン、雑貨など商品の豊富さが特徴である。顧客は、ネットで注文して、サンフランシスコ内に設置された7カ所の拠点に取りにいくスタイルだ。配送料を払えば、自宅配送を選択する事もできる。現在は、ブルックリンとニューヨークで新たな供給業者との契約を進めており、他の都市にも展開する計画だ。
日本のローカル特化型ECは?
日本では、地方の農産物を全国に発送するオンラインショップは、最近よく見かけるようになった。四国のよんめぐや、和歌山の百姓家族等がその例だ。だが、欧米で出現しているような、地産地消を軸としたローカル特化型のECは、まだ事例が見られない。
地方で経営に苦しむ農家や商店が多いのは、日本も同じだ。また、安心・安全思考の高まりから、消費者の地産地消へのニーズは高い。今回見て来た3つの事例のような、ローカル特化型の農産物販売ECは日本でも適用できるはずだ。
まとめ
大型店舗が地方に進出すると、小さな商店は競争力が弱すぎて、太刀打ちできない。だが、複数店舗でローカルに特化したECを活用することで、受注や配送を効率化でき、地域密着型の店舗としての強みを活かす事が出来る。ネットを使いながらも地域を限定することで、新たな価値が生まれるのだ。
これは、八百屋に限らず、他のビジネスにおいても様々な可能性を秘めている。今後、日本でも、多様な分野でローカル特化型のECが増えるだろう。