ウォルマートが、オンラインショップとしてはこれまでにない斬新な配送方法を計画しているらしい。同社は米国に本部を置く、世界最大のスーパーマーケットチェーンである。今回は、計画されている配達サービスの概要と、そのねらいを紹介しよう。

 

斬新な配達サービスの概要

今回の配達サービスの大きな特徴は、「お客さんが、お客さんに商品を届ける配達員になる」ことである。実店舗の来店客が、オンラインショップで商品を購入した別のお客さんに、帰宅がてら商品を配送するというものだ。クラウドソーシングを活用し、ネットで仕事を依頼する方法を検討中らしい。配達員となる来店客には、インセンティブとして商品代金がディスカウントされる。 

 

これにより生じるメリットは大きくは2つある。1つは、来店客の車の空きスペースを活用することで、配送コストを大幅にカットできる点である。もう1つは、実店舗を最終配送拠点にし、来店客を配達員にすることで、配送スピードをアップすることができる点だ。

 

今回の配送計画はまだブレスト段階であり、実現するためには、配達商品の保険、盗難、詐欺など、多数の懸念事項が残る。ウォルマートは、この配達方法の実際の運用は1~2年先になるだろうとしている。

 

ウォルマートのねらい

オンラインで買い物をする顧客が増加している中、ウォルマートのEC化は、大きく遅れを取っている。小売業界では、総売上に占めるオンラインの売上高の平均値が約10%だと言われているが、同社のオンラインの売上は全体の約2%にとどまっている。

 

EC運用の中で、配送サービスは売上を左右する重要なファクターである。ウォルマートは、ECでの巻き返しを図るために、まず配送システムの強化を図るつもりなのだろう。この配送方法の改善が、EC売上にどれだけ影響するかを観察したい。

 

ウォルマートの強みを活かした配達方法

ウォルマートは全米に3,200店ものスーパーセンターを有する巨大な小売店である。今回、発案された配達方法は、全米各地に多数の実店舗を有するウォルマートだからこそできる方法である。

 

来店客が配達員になるという配達方法には様々な懸念があり、実際に運用されるかどうかはまだ不明である。だが、自社の強みを活かした新たな配送モデルを生み出そうとしている点には多くを学べる。ECの運用において、これまでの既存の方法に依存するだけでなく、自社のリソースを活かした新たな改善策にチャレンジする姿勢も必要であろう。