最近、よく目にするようになったO2O (Online to Offline)の事例。本ブログでも、JOGINの事例を紹介した。消費者の移動時間を狙ってオンラインでプロモーションをかけ、リアル店舗(オフライン)に誘導するというものだ。

今回紹介したい事例はその逆パターン、 「Offline to Online」だ。英Tescoは、JOGINと同じく移動時間にフォーカスしながらも、地下鉄のホームというリアルな場にバーチャル店舗を作り、オンラインへ誘導するという斬新なアイディアを実行した。今回は、O2O事例で語り草となっている2011年のTescoの取り組みをもう一度検証してみよう。

 

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店舗増設なしに業界1位を狙うアイディア

 

Tescoは、世界第3位の売上を誇るイギリスの大手小売店だ。今回の事例の舞台となる韓国では、Home Plusという名前で展開している。韓国では、競合E-MARTにつぎ、業界第2位の規模である。E-MARTは、Tescoよりも店舗数が圧倒的に多い。Tescoは、多大なコストを要する店舗増設なしに、E-MARTに追いつく施策として、今回のO2Oのアイディアを考え出した。

 

地下鉄ホームをバーチャルスーパーに

 

Tescoが実施した取り組みとは、「地下鉄のホームを、バーチャルスーパーにする」という画期的なものだった。地下鉄のホームの壁に、スーパーの商品棚を写真にした巨大ポスターを掲示し、一つ一つの商品にQRコードを付けた。利用者は、購入したい商品のQRコードを携帯で読み取ることで、オンラインショップで買い物ができる仕組みだ。

 

サイト登録者、売上が大幅アップ!

 

駅のホームに突然現れたバーチャルショップは、地下鉄利用者の大きな注意を引き、2ヶ月で1万人をオンラインショップへと誘導した。最終的にTescoは、サイト登録者を76%、売上を130%アップさせた。さらに、コマーシャルがカンヌ国際広告祭2011でメディア部門グランプリを受賞するなど、プロモーションとしても大当たりを取った。

 

 

 

消費者の隙間時間を買い物時間にする

 

今回の事例のポイントは、実店舗にこだわらず、忙しい消費者の隙間時間、つまりホームでの待ち時間を、物理的体験を伴う買い物時間にシフトさせた点である。これまでのO2O事例では、オンラインから実店舗へ誘導するケースが多かったこともあり、Tescoが実施したバーチャルストア設置という新たな顧客体験の創出は、O2O事例の中で大きなインパクトを残した。

 

まとめ

 

今後は、Tescoの事例のように、オフラインからオンラインへ誘導する新たなO2Oの事例も増えていくだろう。特に、スマホユーザーの急増から、O2Oの中でもモバイルを活用した取り組みは、さらに重要になると思われる。

 

モバイル・コマースは、今後のEコマースのトレンドだ。 ついついOnline to Offlineに目がいきがちだが、その手法には今回のように、まだまだ多くのアイディアと可能性があるだろう。