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リピーターの獲得には、必ずしも大きな予算や難しい手法が必要なのであろうか。決してそんなことはない。低予算で、しかもオフラインの取り組みで、リピーターを獲得することは可能である。今回は、リピーター獲得のための、すぐに実行すべき3つのオフライン施策を紹介しよう。

 

1.問い合わせ電話には、必ず人が対応する

 

何かの問題を解決しようとカスタマーサポートに電話したにも関わらず、機械による自動応答ばかりでなかなか担当者に繋がらず、がっかりした経験はないだろうか。

 

顧客が電話をしてくる際は、必ず何らかの課題を抱え、それを店舗側に伝えたいと思っている。顧客からの問い合わせの電話には、必ず人が対応するようにしよう。それだけで、お店への好感度は、間違いなく向上するだろう。しかも、気づかなかった問題点をダイレクトに把握でき、結果として問題解決も速いので、時間とコストが節約できる。

 

2.顧客への郵送物には、手書きのメッセージを添える

 

たいていの顧客は郵送物を受け取った時、自分が買った商品と領収書が入っていることを想像するだろう。そこで、あえて手書きの「ありがとうございます。」というメッセージを書き添えてみよう。恐らく顧客は、想定外の手書きメッセージに好印象を持ち、お店に対し親近感を抱くに違いない。ちょっとした一工夫が、より良い顧客体験を作り上げるのだ。

 

可能であれば、これまでの顧客とのコミュニケーション記録を参照しながら作文すると、なお顧客の記憶に残るメッセージになる。それに加えて、顧客が購入した商品と同じ分野の商品クーポンを添えると、より効果的が増す。

 

3.ポストカードを送る

 

アパレルや美容室等の実店舗が、顧客にポストカードを送る光景はよく見る。だが、eコマースの運営者でポストカードを送っている会社は、なかなかないだろう。その中で、あなたの会社だけがポストカードを送ると、際立って目立つことができる。

 

誕生日カードや季節の挨拶カードなど、顧客に合わせた最適なカードの種類を選ぶと良いだろう。これは、メルマガの登録を解除した顧客にも、有効な手段になる。

 

人間味のある顧客サポートがEC成功の鍵

 

上記のいずれの施策にも共通するキーワードは「コミュニケーション」だ。それも、オートマティカルなシステム対応ではなくて、生身の人間が顧客に対応することでのみ生み出される、良質な体験を提供することに注目したい。

 

ただし、これらを実践するには、それ相応の手間がかかるのも事実だ。いち担当者が付け焼刃的に取り組むのではなく、顧客に提供できる価値は何かを全社的に明確に定義した上で、可能であればチームワークで推進することが望ましいだろう。

 

顧客サポートで有名なアメリカの通販会社ザッポスは、単に商品を提供するだけでなく、顧客個人との人間関係を非常に大切にしている。売り手と買い手という淡白な関係でなく、顧客とコミュニケーションを図りながら緊密な関係を構築することで、さらなる商品ストーリーを生みだしている。

 

魅力的な商品ストーリーは、顧客をファンに変える。そうなると、もはや顧客サポートは、マーケティング活動の一つと言えるだろう。人間味のある顧客サポートこそ、eコマース成功の王道なのである。

 

まとめ

 

最近、「ユーザー体験」「顧客体験」という言葉をよく耳にするだろう。価格の安さだけで満足する消費者は、そのショップのロイヤル・カスタマーにはなりにくい。一方で、価格は高くとも、自身の価値観を共有できる体験を提供するショップに信頼を寄せる顧客が確かに存在する。リピート客からロイヤル・カスタマーに成長するのはこうした人々であり、ショップにとっては重要な資産となる。

 

先般、ZOZOTOWNの前澤社長が行った、「スタートトゥデイがやめた10のコト」と題した講演が評判を呼んでいる。この中には、同社だからこそできることも確かにあるが、特に目を引いたのは、システムの外注をやめて、「物流もカスタマーも内製がいい」としている点だ。「自社でやったほうが気持ちが入るし、他社と比べて優位性、差別化につながる」という知見は、価格競争に疲弊しがちなeコマース業者に警鐘を鳴らしたとも言える。

 

顧客個人にフォーカスした人間味のあるサービス提供は、良質な顧客体験を生み、さらに、リピーターを増やしてくれる。リピーターの獲得は、案外、オフラインでも簡単にできるものだ。自社のマーケティングの一つとして、ぜひこれらの3つのオフライン施策を加えてほしい。