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ネットショップは物理的な距離の制約を受けません。さらに言葉の壁さえ乗り越えられれば、世界中のあらゆる国を相手にビジネスができます。反面、国内の商売にはない制約もあります。ここでは海外を相手にネットショップを経営するときに押さえておきたい制度を3つ見ていきましょう。

海外向けのネットショップ経営では、実際に海外にリアル拠点を構える場合と違って法人設立、事業許可等が不要です。けれども、国内での販売とは異なり、たとえ個人経営のネットショップが海外の個人あてに商品を発送したとしても、それは「輸出」になります。

1.輸出の禁止・規制品目

海外向けのネットショップを経営するには、その国で売れる(=需要がある)商品かどうかを検証することが必要です。需要があるとわかってはじめて価格の設定ができます。

しかしそもそも、その国へ輸出してよいのかどうかを知っておかなければなりません。

a)輸出が禁止されているもの(輸出自体が禁止されている)

一切の例外なく関税法によって輸出そのものが禁止されています。

(1)麻薬、向精神薬、大麻、あへん、けしがら、覚せい剤

(2)児童ポルノ

(3)特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を侵害する物品

(4)不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号までに掲げる行為を組成する物品

いずれの品目も言わずもがなのものばかりですが、(4)にある「不当競争防止法うんぬん」は馴染みがないかもしれません。不正行為による(ビジネス)競争の物品ということで、いわゆる違法コピー・そっくりな模倣・他社品を自社のものとするような商品のことを意味しています。

b)輸出が規制されているもの

こちらは全面禁止ではないものの、特定の条件(輸出先の国等)のもとでは、事前の許可・承認なしでは輸出できないものです。規定するものは関税法ではなく、外為法、文化財保護法、植物防疫法等、多岐にわたり、対象品目も、武器から重要文化財、薬物、生物、食料品、中古自動車等さまざまです。かなり事細かに規定されています。

2.関税

関税とは物品の輸出入に際し、支払う必要が発生する税金です。現在、TPPとして話題になっていますね。

今のところ、世界のほとんどの国では商品の輸入の際に関税がかかります。

ただし、かんたんにその一覧をリスト化することは大変です。というのも、どんな品目にどのような関税が課せられるのかは国によって異なっているからです。

関税は通常の場合、輸入者(商品の購入者)に課せられます。物によっては高額になることもありますので、あらかじめ商品説明に関税見込み額を記載できればよいですね。

3.消費税

(a)輸出取引の免税

通常、商取引には消費税が必要ですが、国外への輸出販売には不要となります。消費税の課税は外国で消費されるものは対象とならないからというのが理由です。

(b)消費税の還元

同様のことが輸出商品の仕入れに対しても当てはまります。

ネットショップが

(a)国内で仕入れた商品

(b)海外へ輸出する

場合、(b)で消費税が課税されませんが、ネットショップは(a)の段階ですでに消費税を支払ってしまっています。通常は、販売時の消費税額から仕入れ時の消費税額を差し引いた分を納付しますが、輸出販売では販売時の税額がゼロのため、仕入れ時の税額がまるまる負担となってしまいます。

この不合理を解消するために消費税の還付が行われるわけです。

おわりに

海外向けネットショップを経営には、様々な制度を調べ、戦略的に展開していくことが重要です。

今回紹介した各種制度の詳細は下記にまとめて掲載されているので、海外展開を考えているネットショップ経営者の方はぜひ一度チェックしてみてください。

日本貿易振興機構

国税庁

税関