タグ:集客

59

世界最大規模のEコマース、米アマゾンは、これまで多くの顧客の購買データを保有しながらも、活用せずにいた。同社が有する消費者の購買履歴というビッグデータは、ネット広告業界においては宝の山のようなものだ。今回は、顧客データという強力な武器を持つアマゾンの広告ビジネスに参入について紹介しよう。

 

アマゾンの持つ顧客データの威力

 

Constellation ResearchのRay Wangは、今のアマゾンをEコマースの企業ではなく、マトリクスコマースの企業だと言っている。マトリクスとは、「様々なものを生み出す母体」を意味する。長年蓄積して来たビッグデータをもとに、Eコマースのオペレーションを他方向に展開できる可能性を秘めているためだ。

 

グーグルは検索と無料アプリケーションを、フェイスブックは会員データを元に広告事業を展開している。一方で、アマゾンはクラウドインフラの開発により、15年前から消費者の購買行動をデータ化し、蓄積して来た。これらの会員情報や購買履歴、サイト内での顧客動向などのデータは、他社のそれとは全く質が異なる。彼らに取って、アマゾンの膨大なビッグデータは脅威そのものなのだ。

 

新たな高精度の広告プラットフォームの開発

 

アマゾンは、2010年から密かに広告事業を開始し、2012年末に新たな広告プラットフォームを開発した。アマゾンユーザーの購買パターンを分析し、ユーザーが他サイトに訪れた際に、ターゲット広告をリアルタイムに表示するというものだ。このプラットフォームには2つの強みがある。

 

1.   ビッグデータを活用した精度の高い広告

アマゾンが保有する膨大なデータからは、消費者が何に興味を持ち、何にお金を支払うかを把握できる。そのため、このビッグデータを活用することで、他社には真似をすることの出来ないほど精度の高い広告を打つことが可能だ。

 

2.   独自のリアルタイム入札システム

グーグルやフェイスブックは、広告枠の取引プロセスが複雑で、仲介業者が広告依頼者との間に入っている事が多い。アマゾンは自社システムを独自開発することで、企業が仲介業者を介することなく自分で広告投稿することを可能にした。これにより、広告を掲載したい企業の手間とコストを大幅カットすることができる。

 

アマゾンは、すでにこのサービスを一部の大口広告主へ提供を開始している。今後、さらにシステムの導入先を増やしていく計画である。

 

ネット小売より利益率のいい広告ビジネス

 

アナリストによると、アマゾンのネット小売の利益率が5%以下であるのに対し、ネット広告は20〜30%もの利益率がある。今年のアマゾンのネット広告の売上は10億ドル(約990億円)になる見通しだ。今の時点では、全売上の約1.7%に過ぎないが、この割合を増やせば、大きな収入源になることは明らかだ。利益率の大きい広告ビジネスを展開することで、同社はコマース部門をさらに強化することが可能になるだろう。

 

まとめ

 

質の高いビッグデータを抱えるアマゾンは、広告ビジネスで十分戦っていける。アマゾンの広告ビジネス参入で、ネット広告市場はますます競争が激化するだろう。日本でアマゾンの広告サービスが展開される日も近いはずだ。今後のアマゾンの動向に注目したい。

58

モバイル・コマースは、2013年に21億ドル(約2,066億円)に、今後3年間で622億ドル(約6,119億円)にまで拡大すると推計されている。本ブログでは、以前、急成長するモバイル・コマースに小売業がどう対処すべきかを紹介した。(参考:「米での市場は6000億規模へ!モバイル・コマースが小売業を変える7つのポイント」

 

今回は、さらにもう一歩踏み込んで、小売業が消費者にモバイル・アプリを提供すべき4つの理由を解説したい。

 

1. 小売店モバイル・アプリの利用時間が急増

モバイル・アプリとは、スマホ向けに開発されたアプリケーションで、モバイル用に最適化されたwebサイトとは異なる。スマートフォンにインストールすればブラウザを開くことなく使用できるモバイル・アプリは、直接ショップがさまざまなコンテンツを提供できるため、ユーザーにも受け入れられやすい。

 

実際にモバイル・アプリを利用するユーザーの滞在時間も増えている。モバイル・アクセス分析会社Flurryは、アプリユーザーの滞在時間が2011年からの1年で、132%増加したと発表した。

 

特に、滞留時間が著しく増加したのは、WalmartやMacy’s、Gapなどの小売店が提供するアプリだった。その数値は、なんと前年比525%、約6倍増というものだった。消費者がモバイル・アプリからの買い物を好んでいる事がよくわかるデータだ。

 

2. 作成が簡単なモバイル・アプリ

Apache CordovaPhoneGapは、HTML5やCSS、Java Scriptを使って、簡単にアプリ開発ができるツールである。アップルiOS、アンドロイド、ブラックベリーOS、Windows Phoneなど、個別にアプリ開発が出来る専用プラットフォームもリリースしている。

 

最近では、Intelが無償のアプリ開発ソフト「Intel XKD」を発表したばかりだ。アップルiOS、アンドロイド、Kindleなどのクロスプラットフォーム対応になっている。webサイトと同じように、アプリを開発するには専門知識と技能が必要だ。しかし、これらのツールを使うことで、比較的簡単にアプリ開発が実現することを知ってほしい。

 

3. アイディア次第で生まれる様々な用途

アプリ開発というと、革新的、実用的でなければいけないと思う人が多くいる。だが、小売店のアプリは、製品カタログとショッピングカートというシンプルな構造で良い。商品のディスプレイと価格設定以外は何もする必要がないのだ。

 

さらに、複雑な構造が必要ない上、多様な使用方法が考えられる。例えば、アパレル店であれば、月刊ファッション雑誌やカタログとしてアプリを開発できる。スポーツ用品店であれば、スポーツの公式ルールブックアプリなどでも良いだろう。モバイル・アプリは、コンテンツを提供するツールとして有効であり、ショップ側との関係維持に非常に役立つのである。

  

4.競合他社がモバイル・アプリを提供

ITコンサルティング会社のコグニザントによると、トップの小売業者の84%が少なくとも一つのアプリを提供している。これはつまり、アプリを持っていない小売店は、既に出遅れている事を意味している。規模の大小に関わらず、アプリ提供は商機を見いだす上で重要な戦略だ。

 

まとめ

日本では、ヤマダ電機、TSUTAYA、LAWSON、無印、など続々と小売業がアプリを提供し始めている。モバイル・アプリ開発ツールは豊富にリリースされており、小さな店舗でもアプリの作成が容易になっている。モバイル・コマースの拡大は顕著だ。競合他社にユーザーを囲い込まれる前に、アプリ作成を検討してみてはどうだろうか。


52-1

 

世界で人気沸騰中の画像に特化したSNS、「Pinterest」 をご存知だろうか?最近そのPinterestが、EC運営にも役に立つツールとして注目を浴びている。今回は、ジュエリー専門のECとして急成長中の「Blue Nile」を事例に、 Piterestを使った優れたプロモーション方法を紹介する

 

ティファニーを抜き売上第1位を誇るBlue Nile

 

Blue Nileは、「ダイヤはオンラインショップで売れない」という常識を覆し、大成功している米国のジュエリーECサイトである。年間の売上は、約1億5000万ドル(約148億円)。なんと、ジュエリーECの売上では、あのティファニーを抜き第1位を誇る。実店舗を持たず、オンライン販売に特化することで高品質・低価格を実現した、新興のECサイトである。

 

デザイン重視のプロモーションに、Pinterestを選択

 

Blue Nileが全米で多くの人に知られるようになった背景には、Pinterestをうまく使った優れたプロモーションの実施があった。Blue Nileが取り扱うジュエリーをプロモーションする場合、製品の性質上、その美しさが伝わるようなデザイン重視のプロモーションが必須となる。Blue Nileは、そのプロモーションのために「Pinterest」を選んだのだ。

 

Pinterestには、ユーザーがネット上で見つけた画像を、自分のボードにピン(貼り付け)し、他のユーザーと共有できるキュレーション機能がある。また、ボード上の写真を他のユーザーがリピンすることで、その画像情報がさらに拡散する仕組みを持っている。リピンとはFacebookで言えばシェアにあたる機能だ。

 

Blue Nile がPinterestを選択した理由は、わざわざ自ら写真を用意する必要がなく、外部の美しい写真を活用する事で、楽に自分のボードのクオリティーをあげる事ができるためである。

 

バレンタイン・キャンペーンで認知度拡大

52-2

 

Blue Nileは、Pinterestの特徴を活かして、バレンタインデーにキャンペーンを実施した。キャンペーンの内容は、ユーザーが900ドルのリングを獲得するため、まずPinterestでBlue Nileをフォローし、その後「Be My Valentine」のボードに掲載されるダイヤのリングを3つリピンしなければならないというものだ。

 

8日間実施されたこのキャンペーンで、なんと5,000人の新しいフォロワーを獲得し、50,000回のリピンに成功した。これにより、Blue Nileのソーシャルユーザーが増えた事で、画像付きの口コミが一気に広がり、認知度が拡大した。

 

まとめ

 

Blue Nileの優れている点は、取り扱う製品の性質から最適なプロモーション・ツールを選択したことである。デザインを重視したプロモーションは、ジュエリーだけでなく、ハイエンドなアパレル用品や家具といった製品でも有効である。

 

それらの製品を取り扱うEC運営者には、ぜひPinterestのようなデザイン優先のソーシャルメディアを活用したプロモーション事例を参考にしてほしい。

ECサイトを訪れる消費者が、どこに満足しているのか、あるいはどこに不満を持っているのかがわかれば、サイト改善に役立てることができる。アクセス解析でもある程度はわかるが、より直接的に顧客の声を把握するために、アンケートという手法も有効だ。

 

そこで今回は、オンラインのサービスを例に消費者へのアンケートの取り方について考えてみよう。

 

アンケートで顧客の声を把握する

アンケートによって顧客の声を聴くことで、オンラインビジネスに必要な以下の目的を果たせる。

 

  1.顧客属性をつかむ

  2.購入の決め手をつかむ

  3.潜在ニーズをつかむ

  4.顧客名簿をつくる

  5.顧客とECサイトの方向性をあわせる

 

 実施の際には、この中の1-2点を組み合わせるのが一般的だが、回数を重ねるに比例して集計コストなども増えていく。従来の紙や電話でのアンケートは自由度が高いのが魅力だが、回答者の手間も無視できない。そこで、最近ではオンラインで利用できるSaaS(ASP)型のアンケートサービスが増えてきている。必要な時にだけ利用できるためコストも最小限におさえることができる。

 

 例えば、WEB CASアンケートASP(http://www.webcas.jp/formulator/)を利用して、ECサイト会員を対象とした「購入の決め手をつかむ」アンケートを実施するとしよう。使用する項目は「メールアドレス」や「名前」などのデフォルト項目の他、「サービスがよいから、安かったから、他では買えないから」などの選択肢から選択する項目、「今後の要望」などのように自由に入力できる項目などを設定してもよいだろう。全ての操作がWebブラウザで行えるため、特殊なソフトをインストールする必要がないのも有難い。必要なものを設定していくだけですぐに使用できる。

 

オンラインサービスであることの利点とは

その他、入力項目の一部を修正するだけで過去に使用したアンケートフォームの再利用も可能なので、同様のアンケートを短期間で実施する場合には、時間と労力を節約できる。また、パソコンでもスマートフォン(携帯)のどちらからでも、アンケートに回答することが可能だ。

 

回答データは、サービス側でリアルタイムに蓄積されていくため、回答件数や項目単位の回答内容もすぐに確認できる。CSV形式データでのダウンロードも可能なので、自分でカスタマイズしてデータを分析することにも活用できる。

 

類似サービスには、SPIRAL(http://www.pi-pe.co.jp/spiral-series/)、Survey Monkey(http://jp.surveymonkey.com/) などもあるので、比較検討してみるのもよいだろう。

 

企業の活用事例

Survey Monkeyでは、無印良品が行った消費者アンケートの実例を紹介している。商品開発のためのアイディアを募集した他、Facebookのファン数5万人記念などでキャンペーン応募などにも活用している。実際の質問の例などもあり、参考になるので、是非チェックして欲しい。


『良品計画におけるSurveyMonkey活用事例』

http://www.slideshare.net/jpsurveymonkey/surveymonkey-12002359

 

 

まとめ

アンケートは「顧客の声」を直接聞くことができ、綿密に分析すれば潜在的なニーズの掘り起こしにもつながる。それだけに一度で終わらせずに、出た結果の良し悪しも踏まえつつ、市場の変化に機敏に反応しながら短いスパンで効果検証を積み重ねていきたい。

 

そのためにも、安価で使い勝手のよいオンラインのアンケートサービスを活用したいところである。

2o2o
いまO2Oというキーワードが注目されています。現在のビジネスにおいて、インターネットを活用した集客ができない企業に明るい未来はありません。2012年8月に経済産業省が発表した調査によると、国内のEC市場規模(B to C)は前年比8.6%増の8.5兆円に達し、急速なEC化が進行しています。この背景には、2009年頃からのスマートフォンやソーシャルサービスの急激な普及が大きく影響しているのは言うまでもありません。企業にとって、「オンライン」と「オフライン」双方で売上を伸ばすことが重要な課題となっています。

この難しい課題を解決する秘策として、「O2O(オンラインtoオフライン)」というキーワードが注目されています。O2Oとは、ネット上の店舗とリアルな店舗を、スマホやソーシャルサービスを使って連携させることです。リアルとネットを結びつけて、お互いに相乗効果を生み出すO2Oにはどのような成功事例があるのか、詳しく見ていきましょう。

 

O2O事例 オンライン売上100億円を超えるユナイテッドアローズ

アパレル業界は最もインターネット活用の盛んな業界の一つで、ユニクロや無印良品の総売上高のうちECが占める割合(EC化率)は全業種平均の2.83%を上回る4~6%です。しかし、これを大きく上回るEC化率11.1%超のブランドがあります。ZOZOTOWNを始めAmazonやスタイライフ、自社ECサイトを展開し、オンライン売り上げ105億円の「ユナイテッドアローズ」です。ユナイテッドアローズの2012年度売上高前年比は、店舗が13%、オンラインが18%増、「オンライン」と「オフライン」双方で売上を伸ばし好調な業績をあげています。売上アップの秘訣は巧みなO2O施策にありました。

 

O2Oで顧客満足度を高める3つのポイント

今回は、ユナイテッドアローズが顧客満足度を高めて売り上げに貢献した事例を参考にしながら、O2O施策の考え方を3つのポイントにまとめて紹介します。

<O2Oのポイント その1>実店舗では満たせない顧客の心理をオンラインで掴め!

「実店舗へ訪れた顧客が、何か商品を購入して帰る」というシナリオは理想ですが非現実的です。店員の過剰な売り込みは嫌われますし、DMやメルマガも商品購入の決定打としては効果が弱い施策です。

従来型の一方的な営業スタイルでは買ってもらえないお客様に、自社商品を選んでもらうにはどうすればよいでしょうか。ユナイテッドアローズは、実店舗で満たし切れていない顧客ニーズに着目しました。来店した顧客には、メンズコーナーで恥ずかしそうに彼氏や父親の服を選んでいる女性や、たくさんの商品を心ゆくまで試着したいが店員の目が気になって切り上げる人を少なくない割合で見かけます。

そこでユナイテッドアローズは、Web上のバーチャル人形でいつでもどこでも洋服のコーディネートを試す事ができるサービス「スタイルシェア」を開始しました。これにより、人目を気にせずにじっくりと自由に洋服選びができるプラットフォーム、いわば24時間オープンのユーザ専用試着室を作り出したのです。

2o2o-2

<O2Oのポイント その2>オンラインで集めたユーザをリアル店舗へ送れ!

Webサービスがいくら人気を集めても、それだけでは自社の売り上げに貢献しません。オンラインで集めたユーザが自然に商品購入へ流れる仕組みが「スタイルシェア」には組み込まれています。

ゲーム感覚でバーチャル人形にコーディネートする洋服やカバンなどは、実はすべてユナイテッドアローズが現在販売中の商品です。

着せ替えを楽しむユーザは、気に入ったコーディネートが出来上がったら、その実物商品をかんたんに購入できます。「スタイルシェア」の各アイテムからは、オンライン購入ページと、在庫のある店舗の検索ページがリンクされています。

「スタイルシェア」は、普通にECサイトで洋服を掲載するよりも、遥かに高い販促効果を実現しています。

3o2o-3

<O2Oのポイント その3>口コミでオンラインとオフラインの好循環を促進せよ!

さらに「スタイルシェア」は、ソーシャル・ネットワークの特性を上手く活用しています。様々なユーザが作成したコーディネートは、誰もが閲覧できるようになっています。

これにより、上手にコーディネートしているユーザをフォローしたり、どんな洋服やアイテムを選んでいるのかを参考にしたり、ユーザ同士がソーシャルに繋がります。ユーザは楽しみながら、店員やメルマガなどのブランドからのお勧めとは違った角度から今まで知らなかった商品を手にする機会が増え、最終的には購入頻度が高くなるという好循環が生まれるわけです。

4o2o-4

 

O2O事例のまとめと注意点

ユナイテッドアローズでは、実店舗だけ利用する顧客に比べ、ECと実店舗を併用する顧客は平均購入単価が2.2倍もあるそうです。このように、オンラインとオフラインを上手に循環させる販促テクニックは今後、大きく売上を獲得できるでしょう。

このO2O事例で一番重要なのは「スタイルシェア」が顧客のブランド体験を向上させ、他社と差別化をはかるサービスだということです。ここをおさえれば、予算の少ない中小ECサイトでも、O2O施策で大きな成果をあげられるはずです。本記事はアパレル業界だけでなく多くの業種にも活用できますので、ぜひこの3つのポイントを活用してO20販促にチャレンジしてください。ECサイトを運営し、更に売り上げを拡大したい店舗にとっては必須の販促テクニックかもしれません。


参考資料
経済産業省 平成23年度電子商取引に関する市場調査

↑このページのトップヘ