CRMの導入を考えている経営者にとって、その実際の事例とどのような点で業務や売上が改善されたかは興味がある事柄ではないでしょうか。今回はCRM(ここではCRMシステムの総称としてCRMと記載します)を導入した企業の例を参考に、実際にどのような点において取り入れてよかったのか、というポイントについて取り上げてみたいと思います。
事例その1.社内のおける顧客管理が一括管理されることにより業務の改善が図られた
顧客に対する戦略、という以前に、社内における顧客情報の取り扱い方に悩む企業は多いでしょう。営業担当、カスタマーサービスセンター、受発注担当部署など、それぞれの部署や担当者が、それぞれの形式でバラバラに顧客情報をも持っている、という企業は多く見受けられます。距離的にも、例えば本社と営業所や倉庫が離れていて、情報のやり取りができていなかったという例もあります。
そのような形でしか顧客情報を持っていない場合は、自分たちの業務に利用できても、他の部署や担当者に即座に提供することが難しいと言えるでしょう。
システムで顧客情報を一元管理することによって、誰でも即座にその情報にアクセスすることが可能となった、というメリットをあげる企業はとても多いです。一元管理することにより、情報の伝達ミスや行き違いがなくなり、自分たちの部署に使いやすい形で情報を手に入れることができるようになるのです。
事例その2.顧客対応部署の情報を営業戦略や改善提案に活かすことができた
クレーム対応部署や、お客様対応の窓口など、直接顧客の声を聞くことのできる部署やセクションを設けていない会社はないでしょう。しかし、そこで受けたひとつひとつの要望や疑問点などを、その部署だけの情報として終わらせている企業も多いようです。
具体的な事例としては、大手ガス器具メーカーの例を挙げたいと思います。このメーカーはそのような顧客対応窓口やネット経由であった問い合わせ案件をデータ化し、社内での共通認識とすることで、サイトの改善や、商品開発、品質改善へとつなげることができたそうです。
単なる消耗品ではない長い期間使う商品を扱っているこの会社は、購入したお客様に対して、交換する部品などの消耗部品の案内や、関連商品の提案、アフターサービスと行った情報を、よりきめ細やかに提供できるようになったということです。
事例その3.顧客情報を積極的な販促活動へとつなげることができた
一度購入したことのあるお客様にもう一度購入してもらう、ということは多くのネットショップにとっての課題の一つでしょう。
実際、ある化粧品会社では、「トライアル商品」「お試し商品」を購入した新規の顧客のうち、約8割がその一回限りの購入である、という悩みを抱えていたそうです。そこで、CRMを導入し、以下の3つのポイントについて実施をしたそうです。
- リピート購入した顧客情報の分析を行い、その共通点を抽出。その共通点を持つ顧客をターゲットとする
- トライアル商品の購入理由のアンケートを必ず取る
- 顧客ごとに適切なタイミングでコンタクトを続ける
顧客、と一言で言っても、その顧客を構成しているお客様ひとりひとりは様々な特徴を持っています。
この会社は「一度購入したお客様」という大きな集団でしか捉えていなかった顧客について、その実態はどのようなものかを分析・調査を行いました。そのことにより、リピート購入してくれた顧客と、一度しか購入していない顧客を分類し、「どのお客様により継続的かつ積極的にコンタクトを続ける」のかが見えてきたそうです。
ソーシャルメディアやネットワークを活用したCRMも
最後に、システムに頼らない最近のトレンドとしてのCRMについて簡単に紹介します。
それはソーシャルネットワークやソーシャルメディアを利用しての顧客との関係維持であり、具体例としてはTwitterなどでつぶやかれる自社に関する事柄に対して、カスタマーサービス担当者が回答をするというものです。管理している顧客とtwitterのアカウントとを結びつけることは難しいかもしれませんが、自社や自社製品を実際に利用していたり、興味があるユーザーの声を拾い上げてやりとりができる、という点では顧客満足度を上昇させる役割があると言えるでしょう。
実際、ある大手服飾関係通信販売業者では、そのような試みを行っています。実際にやり取りをしたユーザーだけではなく、それを見ている人にとっても親しみやすく、直接コンタクトが取れる企業だということを印象付ける結果になっているようです。
このように、CRMを用いて顧客との関係を構築する動きは、様々なECサイトで活発化しています。
単に新規顧客を獲得するだけでなく、その後の長い関係性を築くことが、結果として売上を伸ばす秘訣になるのではないでしょうか。